"本物" を知れば、世界は身近なものになる。
アメリカ留学で経験した、
一流ミュージシャンからの洗礼。
第一線で活躍するプロミュージシャンであり、特別講師としての指導も受け持つ引田寿徳さん、星山哲也さん、FIREさん。みなさん実は本校の同期生。3人の恩師であるクリス先生を交え、当時の思い出を語って頂きました。
ロックの本場 · アメリカで音楽を学びたい
海外への留学は、自然と視野に入れていた
クリス:3人は同期生で、入学2年目にロサンゼルスへ留学している訳だけど、まずはその経緯を聞かせてもらえるかな。
FIRE:実は僕、1度大学に通っていたんですよ。プロのミュージシャンになろうと決めてはいたけど、大学に合格したので。でも結局自分には合わなくて、大学中退して専門学校に入りました。海外留学の制度があるのを知って決めたんです。
引田 :僕も海外留学が前提で入学しましたね。当時はボンジョビやエアロスミスの全盛期だったし、ロックの本場であるアメリカで、まず本物を知りたいという気持ちが強かった。
星山:逆に、海外の有名ミュージシャンが特別講師として学校に来た事もあったね。そのテクニックに衝撃受けたのを覚えてる。ティム · ボガートとか、凄かったよね。
FIRE:留学する前、僕ら3人は「Hiqueta Trio(ヒケタ · トリオ)」というバンドを組んでいたんですけど、これは僕が、ギターの一番上手いヤツ、ドラム科で一番上手いヤツを集めて何かしようと、2人に声を掛けて結成したんです。出会いのきっかけはバンドだけど、その頃から3人ともアメリカで "1番" を見てみたいという欲求はあって、意識はすでに海外に向いていたと思う。なので留学はごく自然に視野に入れていたし、不安なんて全くなかった。
世界中から集まるトップクラスの留学生
そのレベルの高さは、講師を超える事も
クリス:確かに3人からは、テクニックを磨きたいという意志を凄く強く感じたね。実際にロスに留学してみてどうだった?
引田:とにかくみんな、めちゃくちゃ上手い!プロでやってた人が生徒で入るのも普通で、ビギナーがいない。世界のトップクラスが集まる学校だから、入りたくても入れないんだろうけど。
星山:分野によっては、先生より上手な生徒もおるしね。上手と言うか、テクニックに説得力のある人。
引田:授業だって、「起立、礼!」で始まる感じじゃないもんな。部屋のドアは開けたままだし、先生がギター鳴らして、生徒が続いて一人ずつピッキングして「じゃあこれ行くぞ!ワン、ツー、スリー、フォー!」で開始。その様子がみんなに公開されてるから、人が集まってくるのも反応があって面白かった。
FIRE:先生も半端なく上手いし、最初に本物を見ちゃうと、もう自分もレベルの低い演奏に戻れないと思ったよ。
クリス:生徒の約半分は世界中から集まった留学生だし、そんなグローバルな環境で、共通言語は英語だから苦労したんじゃない?
引田:ほんと、日本人留学生だけが英語喋れない(笑)。今考えると、もっと喋れたら得した気がする。友人も沢山出来ただろうし。
星山:僕は最初、日本人と一緒に部屋をシェアしてたんやけど、 "これじゃあいつまでたっても英語が喋れへんやろうな" と思って、外国人留学生のルームメイトを見つけて、強制的に英語を話す環境を作りました。
FIRE:ベース弾けば伝わる部分もあるし、細かいニュアンスなんかは、言葉よりもむしろ目の前で弾いてもらう事のほうが理解できるんだけど、1年があっという間すぎて、なかなか英語を喋るまではいかなかったね。僕はルームメイトも引田君だったし(笑)。
引田:FIREは喋れなくても堂々としてるタイプだから。でも日本人って、ミスする事を恐れるでしょ。変な英語言うたら笑われる、だから喋るのやめておこうって。あれは必要ないよ。
クリス:これから音楽活動しようと思ったら、国際性はあったほうがいいね。英語が話せなくても、海外に対して抵抗があってはダメ。アメリカに行って、少しでも経験を積むのはいい事だと思う。
CDやビデオ、ネットでは得られない価値
生の音を浴びる事の素晴らしさ
クリス:1年間の留学経験で得た事って何だと思う?
引田:凄い音楽を聴けた事。それもCDやビデオじゃなくて、目の前の距離で、生の音として。今の若いコたちは、ネットやYouTubeからタダで情報は入るけど、その情報で全てを知ったつもりになってしまうのはもったいない。お金や労力、時間を掛けてこそ手に入る、そんな価値あるものが存在するって事を知ってほしい。
星山:留学するなら自分のテクニックの向上は当然だと思ってたから、とにかくハイレベルの音楽を浴びれた事が大きいかな。
FIRE:普通、学生が凄いミュージシャンとセッションなんて出来ないですから。こちらも本気出さないと置いていかれる。だから日本に帰って来て、クリス先生からバンドの誘いを受けた時は興奮しました。クリス先生のギターテクニックは最高。こんなプレイヤーが日本にいるだけで嬉しかったし、しかも大阪弁喋ってるし(笑)。
クリス:留学から帰ってきて研究生だった3人に、すぐ声を掛けたよね。「セッションしようや」って。僕はわざと難しいジャズの曲を選んだけど、3人とも興味を持って楽しんでた。技術はもちろん、そんな彼らの性格も好きだったから、週末にこのメンバーで、カフェバーでライブもやったし。
引田:ロスから帰って来て、学校でクリス先生に出会わんかったら、僕らの活動もまた変わってただろうね。
星山:ほんまに感謝してます。
プロミュージシャンとしての道のり
自分の得意な事で、いかに人を喜ばすか
クリス:研究生を卒業後、3人はそれぞれプロの道を本格的に目指す訳だけど、現在に至るまではどんな道のりだったの?
FIRE:僕は卒業後、メジャーデビューの話があって東京に行きました。結局その話は無くなってしまったんだけど、このまま帰りたくはなかったので、バイトしながら東京で生活してましたね。数年後にバンドでメジャーデビューして、バンド解散後はすでに業界でのコネクションが出来ていたから、スタジオの仕事をもらえるようになって。音楽で食えるようになったのは、その頃からかな。プロになるって決して難しい事じゃなくて、自分の得意な事で人を喜ばせる共通点を見つけ出した人がプロになれる。それをいかに早く見つけるかが大切。生活できないかもって悩むんでしょうけど、ならその時点で辞めたほうがいいかもしれない。音楽を続けながら生活する方法なんて、その気になれば実はいくらでもあるからね。
音楽の才能がない人はいない
自分の中にある本能を磨く事が、プロへの道
引田:僕は箱BAR(ライブハウスレストラン)でのライブやプライベートレッスンの仕事をしながら、アメリカに行く為にお金を貯めてました。渡米してもすぐに仕事はなくて、貯金を崩しながらの生活。最初の仕事は僕らが留学していたロスの学校の講師で、そこで知り合いが出来ると、自然と仕事の声が掛かるようになった。留学経験のおかげで、アメリカという存在が遠く感じなかったのは大きいかな。僕は才能とは、 "環境を作る能力" だと思う。デヴィッド · リー · ロスのツアーオーデションの話があった時、ロスでその電話を取れる環境にいたから受かったんであって、まずそこに身を置いておかないと。日本にいても電話は来ないから。
星山:僕は京都で染物のバイトしてました。先生から紹介してもらった箱BARでの仕事や、クリス先生とライブやったり。そこで知り合いが増えていって、少しづつ自然に、バイトと音楽の仕事の比率が変わっていったんです。
クリス:星山君は大阪で仕事が入るようになって、プロミュージシャンとして経済的には安定してたけど、本人が満足していない気がしたんだよね。FIRE君は東京、引田君はアメリカで活躍してて、 "僕はこうじゃないねん" と思ってた。だから僕が「東京においでよ。人生チャレンジしないと」と声を掛けたんだよ。
星山:クリス先生には卒業後も色々と相談していて、あのひと言は本当に大きかったです。2人とも大成功してたから、やっぱり自分の中で葛藤があったんですよ。
クリス:今は忙しすぎて、メールの返事が2日後だけどね(笑)。大きい夢を持つって大切。でも夢を目指しながら食べてかなきゃいけないから、ちょっとだけ幅広く勉強するほうがいい。譜面の読み方、書き方も含めて。すると仕事に出来る確率が高くなる。音楽の才能がある · ないで悩む必要はないです。才能ない人はいないよ。音楽って、どの時代、どの環境にもある人生のツール。1歳の子が自然とダンスするのと一緒で、本能なんです。その本能を綺麗に上手に磨く事が出来れば、夢は必ず実現します。
卒業生/ドラマー 星山 哲也さん
profile
劇団四季ミュージカル「ライオンキング」にパーカッショニストとして参加。浜崎あゆみ · 宇多田ヒカル · EX.BOLD · misono · KellySimonz BLINDFAITH等、多数のアーティストサポートや録音に参加。最近ではミッキー吉野氏のニューバンド『Mickie Yoshino New Project』を始め佐久間正英氏のリーダーバンド『unsuspested monogram』 · La'cryma Christi TAKA & HIROのプロジェクト『Libraian』で活動。
その他CM録音等の分野でも活躍。
卒業生/ギタリスト 引田 寿徳さん
profile
日本人初の全米デビューロックギタリスト。卒業後、ヴァン · ヘイレンのデヴィッド · リー · ロスのバンドで正式メンバーとしてワールドツアーを廻る。自己のバンド『Hideous Sun Demons』でも全米デビューを果たす。日本人初でボストン · ポップスのステージに立ち、約40万人の前で演奏。ビリー · シーンやレイ · ルジアー、スティーブン · セガールとセッションやライブをするなど、世界的に活躍中。
卒業生/ベーシスト FIREさん
profile
16才の時ヴァン · ヘイレンやイングウェイのギターに影響を受けベースを始める。'97年にロスの仲間と組んだトリオバンド『SUPER TRAPP』でBMGよりデビュー、同社にて2枚のアルバムと5枚のシングルをリリースする。その後アースシェイカーのMARCYとのBAND『theMARCY BAND』や、KERA率いる『ザ · シンセサイザーズ』等、数多くのバンドを掛け持ちする傍ら、福山雅治やSUGIZO等のサポートをこなしつつ様々なレコーディングに参加。'05年に「Dt.」でavexよりデビュー、並行して矢井田瞳や絢香、秦基博、安室奈美恵等のライブでも全国を駆け回る。
副校長 クリス · ジャーガンセン先生
profile
ロックバンド ストライカーのメンバーとして全米ツアーを行ったギタリスト。自身の楽曲が映画「The awakened」「ネグレッツ」の主題歌,Victory MotorcycleのCM曲になるなど作曲家としても活躍。またインターネットラジオチャートで世界№1を獲得するなど、世界から高い評価を受ける。ギター教則本多数。