ギターを弾くことが楽しいのは、
仕事になった今でも変わりません
黒田晃年さん、城石真臣さん、田中俊亮さんは、様々なアーティストのライブやレコーディングで活躍するギタリスト。そんな3人が、副校長のクリス・ジャーガンセン先生のプレイを初めて見た時は「衝撃的だった」と、声を揃えて言います。そして彼らは本校を進路として選び、現在はプロになってギターを弾いているのです。
オープンキャンパスでクリス先生の
演奏を見て、ノックアウトされました
クリス:みんなは何で、ギタリストになろうと思ったの?
黒田:小学校の時に、自分の中で「才能があるな」と思ったのが、音楽だったんです。最初はピアノを習っていたんですけど、引っ越したことで教室に通えなくなり、数年間音楽から離れた時期があったんですよね。また音楽に戻った時、手にした楽器がギターでした。中学の時点で「プロのギタリストになろう」と決めていましたが、親に「高校には行け」と言われたので、しょうがなく行ったんです。ただ、高校に入っていなければ、この専門学校に入れなかったので、よかったなと思いますけど。
城石:僕は中学3年生からギターを始めたんですが、もともと音楽に興味があったところに、部活を引退したことで「楽器をやってみたい」という気持ちが高まったんです。ひとつ上の先輩から「うちにギターがあるから、遊びに来なよ」と誘われて、そこで初めて弾いた曲がザ・ナックの『マイ・シャローナ』。先輩の演奏を見て、見様見真似で弾いたところ、「自分なりに弾けて楽しいな」と感じたんですよね。そこからギターが部活に取って代わった感じです。プロになろうと思ったのは、地元にはライブハウスが全然なかったので、コンテストに出ることがライブ代わりだったんですよ。その流れで「こういう舞台にずっと立っていたいな」と思ったことが、きっかけかな。
田中 :僕がギターを始めたのは中学2年。たまたま中学校からの帰り道にある雑貨屋に飾ってあったクラシックギターに目をつけて。興味はあるけど、「ギターは高価だから、手を出せなさそうだな」と思っていたのですが、そのギターは1万円くらいで手の届く範囲でした。それを親に内緒で買って、家でポロンポロン弾き始めたのが "はじめてのギター" です。プロ志望になったのは、高校で進路を悩んでいた時に、専門学校の存在を知って「プロになれるのかな」と思ったことが発端ですね。そしてこの学校で、クリス先生と出会い …… 。
クリス:うん、覚えてるよ。「もし僕と勉強したいなら、僕のいる学校においで」と言ったんだよね(笑)。
田中:そうです。だから、クリス先生のいる学校を志望しました。
クリス:在校していた時期はバラバラだけど、僕にとってはみんな印象的な学生だよ。3人ともマジメで、ちゃんと授業に出ていたし、アンサンブルの曲は必ず覚えてたよね。そうだ、なんでこの学校を選んだの?
黒田:同じ高校の2歳上の先輩が、この学校に行っていたんですよ。それで情報を聞いて、「ここに行きたいな」と思ったんです。
城石:僕はオープンキャンパスでクリス先生の授業を受けて、ノックアウトされましたね。「こんなスゴイ人がいるんだ」と。
田中:僕もクリス先生にノックアウトされていますが、当時は他の学校のオープンキャンパスにも行ったんです。その時に感じたのは、この学校の雰囲気がすごくいいな、ということ。プラスの力を感じたというか、明るさがずば抜けていたんですよ。
城石:うん、それは僕も感じた。
黒田:活気に溢れてるよね。
卒業した現在も、先生は常に
刺激を与えてくれる存在です
黒田:クリス先生のプレイを見た時に、根本的に持っている感覚の違いなのか、全然フレージングが違うな、と思ったんですよ。日本人は、コピーはうまいけれど、根付いているものがアメリカ人とは違う。それは指が動くとか、弾き方の問題じゃなくて、感覚なんですよね。先生のプレイを目の当たりにして、「こういうスタイルもあるんだ」と勉強になりました。
城石:黒田さんがおっしゃる通り、日本人と同じフレーズをクリス先生が弾いたとしても、こちらの耳に入ってくる感じが全然違う。それは何故なのかを、ちゃんと教えてくださるんですよ。仕事をするようになった今でもクリス先生のプレイを見ると、10代の頃の新鮮な気持ちに戻って、「新たな弾き方にチャレンジしてみよう」と思えるんですよ。卒業した現在も、常に刺激を与えてくれる存在ですね。
田中:僕もオープンキャンパスでクリス先生のプレイに衝撃を受けた1人ですが、そこでピッキングなどを教えてもらったんですよね。その後、どこへ行くにもピックを持ち歩いて、ポケットの中でピッキングの練習をしていたことを覚えています。
クリス:田中くんは、テクニックにすごく意識を向けていたよね。「このピッキングはどういう風にしたらいいの」などを質問された記憶があるよ。
城石:クリス先生の授業は、一般の人がイメージする「専門学校でのギターの授業」とはかけ離れた教え方をしていると思いますよ。もちろん細やかな指導もしてくれますが、「一ミュージシャンとして大切なこと」を教えていただいたし、先生のプレイスタイルも盛り込まれていて、いわゆる平均的なギターレッスンではないですよね。
クリス:ワガママな教え方だから(笑)。よく「小さな頃からギターをやっているの?」「親が音楽をやっていたんじゃないの?」と聞かれるんだけど、全然そんなことはなくて、僕もみんなと同じ10代から始めたんだよ。結局、スタートの時期は関係ないんだ。この専門学校から音楽を始める学生だって、いるんだし。ただ、そこからどれくらいギターに時間を費やせるか、だよね。そういう意味で、この3人はみんな、ギターを弾くのを楽しんでいたと思うな。授業以外でもギターを片時も手放さず、歩きながら弾いたりしていたものね。まずは「ギターを楽しんでいた」という印象があるよ。
黒田:ギターを弾くことが楽しいのは、今でも変わらないですよ。
自分のことを信じて頑張れば、
きっと人生もうまくいくはず
クリス:みんなは、どうやってプロになったんだっけ?
黒田:学校の先輩から誘ってもらって、福岡のライブに出演したことがきっかけです。その後、学校で出会った師匠的存在の人から演奏を頼まれるようになり、プロとして本格的に活動を始めました。
城石:僕は卒業後、講師の先生から「個人レッスンを引き継いでくれないか」と頼まれて、レッスンの仕事を始めました。それから地方で自分のバンドやサポートなどの活動をしていたのですが、「やっぱり東京でギタリストとして活動したい」と思ったので25歳でほとんどアテもなく上京して、改めて仕切り直した感じでしたね。
田中:僕は在校時代に組んだバンドでずっと活動していたんですが、その時にお世話になっていた事務所のプロデューサーからお話をいただいてサポートとして活動を始めたのが、プロのギタリストとしての第一歩でした。僕は作曲活動もやっていますが、この仕事はギターをきっかけにいろんなサポートをやらせてもらい、そこで知り合ったプロデューサーから「ゲームの曲を作ってみない?」と言われたんです。それから制作サイドに携わるようになりましたね。
クリス:プロになると、いい面も大変な面もよく見えるでしょう?
黒田:いい面はやっぱり、大舞台に立てたことですよね。武道館や東京ドームみたいな大きい会場に立つことは、やはりミュージシャンの夢ですから。逆に大変な面は、ギターの本数がどんどん増えていくし、機材も増えるので、お金がかかります(笑)。ギターの音色に対して興味が出てくると、それだけ買わないといけないですしね。ただ、「大きな買い物をしたら、それだけの仕事が来る」ということは、すごく実感しています。
城石:よかったことは、趣味と実益を兼ねられるというか。ギターを集めることも、それを「こういう現場で使おうかな」と考えるのも楽しい。音楽だけでずっと飽きずに続けていられることは、嬉しいですね。しかも、この道でお金をもらいながら、追求していけることも幸せ。大変な面は、自己管理も含めてのセルフプロデュース。自分を律さないといけないし、社会人としてのマナーも身につけていないといけない。学校では幅広くいろんなことを教えてもらえますが、そこから自分のスタイルを模索しなくちゃならない。自分がどうなりたいのかを考えて、それをブレずに進めていくことは、時には大変だな、と感じますね。
田中:ギタリストとしてはお二人が語ってくれているので、僕は作曲家サイドの話をしますね。テレビで自分の名前がクレジットされた時や、ライブで自分の曲をパフォーマンスしてくれた時は、気分が高揚しました。大変なところは、なかなか陽の目を見るまでが大変というか … 。たくさんの曲を作っていますが、世に出るのはその中のほんの一部。時々、黄昏れる事もあったりしますが(笑)陽の目を見た時に全てが報われます。
黒田:僕も曲を作るんだけど、どれくらいのクオリティのものをコンペなどに提出するの?
田中:案件によって違いますが、ピアノの弾き語りだけでもメロディが良ければ通る事もあるみたいですね。でも基本的には完成品の見える様な、アレンジまで作り込まれたデモを求められている事が多いです。僕もなるべく作り込むようにしています。
クリス:田中くんは作曲家の仕事もしているけれど、それもアリだと思うよ。特に今の時代は自ら道を狭めるより、いろんな活動をしたほうが成功しやすいよね。だからこの学校では、ミュージシャン系の学生もキーボードや音楽ソフト『Pro Tools』の授業を取るんだよ。
黒田:それはうらやましいなぁ。僕の時代は授業がなかったから、独学で学んだもの。
城石:『ProTools』の仕組みをわかっていると、スタジオに行ってもレコーディングがスムーズですもんね。
クリス:この業界、大変なことも多いけど、その分喜びも大きいよね。この業界を目指す人にアドバイスはあるかな?
黒田:CDがなかなか売れない世の中になっていますが、音楽は絶対になくならないはずです。音楽を楽しみつつ、仕事にしていくためには、諦めずに続けていくことが大切ですよね。ぜひこの学校を卒業してプロになったら、将来は僕に仕事をください(笑)。
田中:うん、とにかく続けることが大切。長く活動していく中で、思ったようにうまくいかないで、宙ぶらりんな時期もありました。それでもずっと続けていたから、作曲という自分にとっては意外な道で花開くことができたんです。諦めず、自分の道をまい進してください。
城石:音楽をずっと続けていくことは、昔に比べると夢がない世界だと言われていますが、僕自身はそうは思っていないんです。まだまだ音楽をやることによって、自分の夢は実現できると思います。変に「ここまでだ」と自分を枠にはめず、そこから飛び出す勇気を持ってください。そうすれば、必ず道は開けるはず!
クリス:ジャズ・ロックギタリストのジョン・マクラフリンが来日した時に、僕は通訳として彼のインタビューに同席したんだ。その時に、「あなたにとって音楽とは?」と聞かれたジョンは、「一人一人、人生においてミッションがある。私にとっては、それが音楽だった。ほとんどの人が、そのミッションを見つけられず社会人になる。みんながこのミッションを見つけられたら、経済はもっと活性化し、戦争もなくなる。なぜなら、好きなことを仕事にできるからだ」と答えたんだ。若い頃は、「好き」から始まっていいんだよ。自分のことを信じて頑張れば、きっと人生もうまくいくよ!
卒業生/ギタリスト 城石 真臣さん
profile
2011年にearthmindのメンバーとしてgr8!recordsから メジャーデビュー。「機動戦士ガンダムUC」主題歌「ガリレイドンナ」EDテーマなどをリリース。 2013年にはAnimelo Summer Live(アニサマ)に出演。また、サポートギタリストとして多くのアーティストのレコーディング、ライブも行っている。
卒業生/ギタリスト 黒田 晃年さん
profile
1977年9月19日生まれ 北海道札幌市出身。 ロックをベースにエレクトリック、アコースティック、ガット、 12弦を弾きこなすマルチギタリスト、作編曲家。 1998年よりスタジオワーク&ライブサポートのキャリアをスタートし、 これまでにYUI(FLOWER FLOWER)、絢香、森山直太朗、Ms.OOJA、 KinKi Kids、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)、松任谷由実、今井美樹、 柴咲コウなど多くのアーティストと共演する中、2010年6月に1st Solo Album「inside out」を発表。高い技術力と独創性が評価されている。 2016年には布袋寅泰と夢の共演を果たし、以降全てのJAPAN TOURとASIA TOURを成功させ、今や日本を代表するギタリストとなった。
卒業生/作曲家、ギタリスト 田中 俊亮さん
profile
「DIANA ∽ DIANA」の元ギタリスト、その後サポートギタリストとしての活動を経ながら、作曲家としての活動をスタートさせる。
【楽曲を提供した主なアーティスト】
NMB48「ヴァージニティー」「北川謙二」、指原莉乃withアンリレ「意気地なしマスカレード」、AKB48、SHIN HYESUNG、ファンタズム、中川かのん(東山奈央)、zwei、中村繪里子、等
副校長 クリス・ジャーガンセン先生
profile
ロックバンド ストライカーのメンバーとして全米ツアーを行ったギタリスト。自身の楽曲が映画「The awakened」「ネグレッツ」の主題歌,Victory MotorcycleのCM曲になるなど作曲家としても活躍。またインターネットラジオチャートで世界№1を獲得するなど、世界から高い評価を受ける。ギター教則本多数。