この音楽業界で、
残り続けるバンドになりたい
ジラフポットのメンバーは、全員本校の卒業生。名誉教育顧問の松岡充先生も本校の卒業生だけに、彼らがたどってきた道に深い理解を示します。 "音楽" と "バンド" という共通語があるからこそ、トークは大盛り上がり。本校で学んだことを糧に、今も飛躍を続けているのです。
本気でやってくれるバンドメンバーを
探すために、この学校に入りました
松岡:ジラフポットは全員、この学校の卒業生ですよね。そもそも、なぜここに入学しようと思ったの?
中野:実は僕、特殊メイクがやりたくて、映画の専門学校に入ろうと思っていたんです。それで高校時代に、専門学校の進路ガイダンスに出たんですね。いろんな専門学校の先生達が説明する場所を設け、生徒は各所を回って話を聞く、みたいな。そこにこの学校の先生もいて、話を聞いたところ …… 、気がついたら担当の先生の熱い気持ちに説得されていまして(笑)。音楽系のこの学校に、入ることとなりました。
松岡:それでプロミュージシャンコースに進学したんだよね。なぜ、ミュージシャンを選択したの?
中野:最初は音響か照明になろうと思っていたんですよ。でもある講師の人から、「中途半端なことを言っていちゃ、ダメだよ。プロを目指すなら、腹をくくらないと」と言われて、そういうものなのかと思い、一本に絞りました。
松岡:僕と真逆だね。僕は入学当時にはバンドを組んでいて、目標はプロデビューだったけど、アーティストを支える裏方の部分を勉強しておいても損はないだろうと思い、音楽クリエイターコースに進んで。僕の時代はまだ、プロミュージシャンコースがなかったというのもあるけど。制作サイドのことを学んだら、さらに質の高い音楽を創れると思ったんだよね。
関:僕は、バンドメンバーを探しに行ったんです。高校の軽音楽部でバンドを始めたんですけど、本気で一緒にやってくれるメンバーが見つからなくて。「この学校に入ったら、同じ夢を目指す人がいるやろ!」と、入学しました。最終的に全員のメンバーが揃ったのは、卒業して1年後でしたが(笑)。

松岡:そうか、このメンバー自体は、在校中の結成じゃないんだ。
原田:関さんは、9代目のベーシストなので。
松岡:どうやって今のバンドに加入したの?
関:人からの紹介です。
松岡:なぜ入ろうと決めたの?
中野:あ、それは僕も聞きたい(笑)。
関:最初にジラフポットのCDをもらった時に、数曲ピンと来るものがあって。そうしたら、この学校には、学生同士にバンドメンバーを紹介してくれるブッキングセンターというのがあって、そこの人がつないでくれたんです。一度セッションしてみたところ、「あ、もしかしたらイケるかも」という感覚があったんですよ。
松岡:なるほどね。そして、原田くんがこの学校に入った理由は?
原田:僕の理由は本当に単純で、あまたの専門学校の中で一番パンフレットがぶ厚く魅力的だったからです(笑)。
松岡:それで入学して、今はパンフレットに載る立場になって。
原田:本当に嬉しいです(笑)。
松岡:でもね、「音楽を仕事にしたい」と言ったら、親から反対されることもあるでしょう。この学校に入るために、親を説得した?
関:「就職に強い」ということが、親には効きました(笑)。それで口説きまくって、入学できました。
中野:僕は厳格な父親に大反対されました。「ちゃんと就職するから、行かせてくれ」と説得しましたね。最後は「勝手にしろ」と言われましたが …… 。
松岡:今は、どうなの?
中野:今はすごく協力的で、音源も聴いてくれます。ただ、「お前らの音楽は、何を言っているかわからん」と言われますが(笑)。でも昔みたいに「早く地元に帰ってこい」とは、言わなくなりましたね。
松岡:おぉ、よかったじゃないですか。原田くんは?
原田:僕はここに入る前はあまり積極的に外に出ていくタイプではなかったので、「音楽の学校に行くの?おめでとう!」と快く送り出してもらえました(笑)。
松岡:みんな、在校中はどんな感じだったの?僕自身は、音楽という同じ夢を持つ仲間が集まっている場所だけに、すごく刺激があったけど。やっぱりライバル心もあったし。
中野:ライバル心、ありましたね〜。
関:学校が始まってすぐくらいの時期は、「アイツはどんだけ上手いねん!」と気になる人がいたり。
中野:それが、実はレコーディングエンジニアコースの学生で、プレイヤーじゃなかった(笑)。
松岡:意外とそういうことが多いよね(笑)。
ギターの授業で、プロの講師に
一対一で質問することができたのは
大きな経験です
松岡:在校時の、一番の思い出は?
関:バンドアンサンブルの授業で、各パートがセッションするんですけど、自分のバンド以外のいろんな人と演奏できるのがすごくいい経験になりました。何より嬉しいのが、先生も参加してくれるんですよ。一緒に演奏することで、「ここを目指せばいいんや」という目標がはっきり見えましたね。
松岡:授業だと必然的に様々な人と一緒に演奏できて、自分に足りないところがわかるからありがたいよね。さらに先生のプレイをリアルで体験できるのもいい。
中野:僕はそれまで全く音楽をやっていなかったから、すべてが新鮮だったし、吸収していました。特に役に立ったのは、ギターの一対一でのレッスン。プロとして活躍している講師に、質問を直接できる。これは、この学校に入っていないとできませんから。おかげで、だいぶ成長できました。

原田:音楽理論も、すごく役に立ちましたね。僕の専攻はドラムだからそんなに必要ないと思っていたんですけど、2人が「コードの展開が …… 」という話をしていてもなんとなく内容がわかるのは、あの授業のおかげです。
松岡:我流でやっていると3つくらいコードを覚えたら嬉しくて、そのコードばっかり使って、気がついたら似たような曲ばっかりできていた、ということが多いからね(笑)。ロックは音楽の定義にハマらないジャンルだけに、「音楽理論なんて必要ない」と思うかもしれないけど、 "定義"を知らなければ何がはずれているのかもわからない。理論を知っているからこそ、「僕らはあえてこういうスタイルなんです」と音楽を突き詰めることができる。3人とも音楽理論をちゃんと学んでいるのは、バンドとして強いと思うよ。さて、そこからどうやってプロになったの?
関:ライブハウスでやっていたら、音源を流通する人の目にたまたま留まって、「一度CDを流通させてみないか」と声をかけてもらったことがきっかけです。
中野:それまではずっと、ライブを続けていただけでした。
関:少しずつ集客が増えていく中で、運良くアンテナを張り巡らせた人と出会えたんです。
中野:しかも出会った日のライブは、ベースの弦が本番で切れてしまって、その人から「全然良くなかったね」とハッキリ言われたんですよ。終わったと思っていたら、その人が後日僕らの音源を聴いてくれたみたいで、「いいじゃないか」と。一度ダメと言われているのに、どこでどうなるかわからないものだな、と感じました。
松岡:本当だね。それでプロになったけど、今でも練習はしている?
関:やってます、リハーサルスタジオで。バンドとしては、週に10時間。
松岡:ライブの予定がある週にやるの?
関:どちらでもですね。
原田:ライブがあれば前日にやるし、ない週も練習はしています。
松岡:どんな練習をしてるの?
関:既存の曲を合わせたり、リリースが決まりそうだったら曲を作って出し合ったり。
松岡:個人でもやってる?
中野:僕は個人だとギターの練習より、曲作りをしていますね。
関:僕は家でもテレビを見ながら、ずっとベースを弾いてます。
原田:僕はスタジオに1人で入って、練習しています。週に1〜2回、最初は1時間で予約して、「もっとイケそうだな」と思ったらどんどん時間を増やしていく感じですね。
松岡:特にヴォーカルやプレイヤーをはじめとする専門職は、本番以外にどれだけ時間を費やしているかによって、確実にレベルが変わるからね。
現役のプロが教えてくれる基礎を学んだことで
効率的に上手くなれました
松岡:多分、このパンフレットを読む学生の皆さんにとって、「バンドを結成してどれくらいで、音楽だけで生活していけるようになったか」は、気になるポイントだと思います。
中野:バンドで稼いだお金は、そのままバンド費用として貯めています。個人には配分していないんですよ。
松岡:最初はそんな感じだよね。でも、ちゃんと活動費をまかなえていることがプロの証。プロになりたい人は、「本当に音楽だけで食べていくことは可能なんだろうか」と不安を抱えていると思う、僕は可能だと思う。ただ、そのためのハードルは高い。だからこそハードルを越えるための練習や、センスを磨くことが必要だよね。もしこの学校に入った場合、2年間なんてあっという間ですよ。でも、その2年間を、3年分にも4年分にもすることができる。音楽だけに特化できる時間だから、すごく幸せなことだよね。
関:そうですよね。バンドを始めた頃は、やっぱり大変でしたけど …… 。お客さんが0人という時もありました。
松岡:うわっ、それはキツイ!(笑)

関:みんなで「公開リハーサルやんけ」と言っていたんですよ(笑)。チケット代のノルマが自腹になるから、負担も大きいし。今となっては、もうそんなことはないですけどね。
松岡:僕も、お客さん5人ということがあったよ。バンドメンバーと同じ数、それこそマンツーマン(笑)。
関:そういう経験があったからこそ、今の状況がありがたいと思えますよね。
松岡:プロになるために、「ここは人より努力した!」というところって、ある?
中野:僕は、音楽に関しては0からのスタートだったので、周りに笑われたこともありました。それで燃えて燃えて …… 、勉強しまくりましたね。全部、吸収しました。
松岡:それで、方程式みたいなことってできた?「バンドには、これが絶対重要なんだ」という方程式。
中野:コード展開の引き出しを広げることですね。音源を聴いて、ダイアトニック・コードの順番がわかるようにしたり、定番のコード進行が使えるようにしておいたほうが、絶対にいいです。プレイは回数を重ねれば勝手に上手くなるから、学校では曲作りに使える勉強を重点的にしていました。
関:僕の場合、バンドを組んでからの話ですが、打ち上げは欠かさず出るようにしています。初期の頃は、2人ともあまり打ち上げに出なかったので、僕が広報担当というか …… 、人とつながっておく役割を果たそうと思ってました。
松岡:バンド活動においては、人とつながることも重要で。つながって初めて音を聴いてもらう機会が生まれるから。
関:やっぱり仲良くならないと、聴いてもらえないですからね。
原田:僕は …… 、ドラムの基礎を在校中に人一倍やりました。最初から楽器を習って始める人って、少ないと思うんですよ。基本的に、自己流から始まる。僕もそうでした。学校で絶対的に上手い講師の人から「この基礎練習を徹底的に」と言われて、みんな「そんなん、でけへんやん!」と言っていたけど、僕は絶対にやろうと思ったんですね。それで実際にやってみたら、効率的に上手くなれました。プロが教えてくれる基礎は大事やな、と実感しましたね。

松岡:現役のプロやスタジオミュージシャンが学校で「絶対にこれはやっとけ」と教えてくれることは、プロへの近道なんですよ。つまりは「どこを通ってもこの壁にぶち当たるから、在校中にクリアしておけ」ということ。まずは信じて1年続けてみたら、2年目に「わっ、めちゃくちゃスキルアップしてる!」と絶対なるから。もしこのパンフレットを読んでいる人が本校に入学したら、原田くんの言葉を思い出してもらいたいな。
関:この学校の卒業生と現場で会うこと、ありませんか?
松岡:ある、ある。ミュージシャンもそうだけど、スタッフさんで現場に来ている人にも、よく会う。年上だと思っていたスタッフさんから「僕、松岡さんの学校の後輩なんです」と言われて、さっきまで敬語だったのに、「えっ、そうなの?」とフランクになったり(笑)。同じ学校の卒業生だと、なんとなくファミリー感があるよね。
関:僕らもイベンター関係の人で学校の先輩とよく会いますし、最近は同い年の仲間たちも頑張っています。うちの学校の卒業生は、他の学校よりも現場で活躍している人が多い気がしますね。
松岡:これって、大きなメリットだよね。同じ学校に通っていたというつながりは、気分的に親戚みたいなものだから、会うと嬉しくなるし。それでは最後に、ジラフポットの夢を聞かせてくれるかな。
中野:今やっていることを、ずっと続けたいです。このまま曲げないところは曲げずに、突っ切って行きたいですね。
関:もちろんオリコン1位も取りたいし、武道館にも立ちたいですが、まずはサイクルの早いこの音楽業界で残り続けるバンドになることです。
原田:実は昨年、僕らの乗った車が交通事故に遭ったんですよ。ケガ程度で済んだんですが …… それを経て、さらに「続けたいな」と強く思いました。
松岡:全員卒業生のバンドがいつまでも活躍し続けるというのは、先輩の僕としても本当に嬉しいことです。いつか、一緒に作品創りが出来たらいいですね。

ギターヴォーカル 中野 大輔さん


ベース 関 浩佑さん


ドラム 原田 直樹さん

ジラフポット
profile
2011年中野大輔(Gt,Vo)、原田直樹(Dr)の二人に関浩佑(Ba)が加わり現編成で本格始動。2012年から地元の盟友KANA-BOON、コンテンポラリーな生活、オトワラシと共に4バンド共同企画「ゆとり」を開催。2013年3月のファイナルまでに全5公演を行い、全てソールドアウトと大成功させる。2014年バンド初となる全国流通盤『Hydro human』をリリースし全国ツアーを敢行、ファイナルの大阪、東京のワンマンライブをソールドアウトさせ勢いに乗る。またこの作品はタワーレコードのバイヤーがおすすめするピックアップ盤、通称「タワレコメン」に選出された。FM802主催のライブサーキット「MINAMI WHEEL」では毎年入場規制かかるほどの盛り上がりで、関西若手バンドシーンの旗手として存在を知らしめている。そんな数々のライブを重ね、ライブバンドとして成長し続ける彼ら、2016年8月に4枚目の全国流通盤『The Quiet Cube』をリリース。


卒業生/名誉教育顧問 松岡 充さん
profile
1994年にロックバンド「SOPHIA」を結成。1995年メジャーデビュー。バンド結成以来、一年も欠かすことなく毎年全国ツアーを行い、これまでにシングル40枚、アルバム20枚をリリース。約200曲にも及ぶ全楽曲を作詞し、「街」など多くの代表曲を作曲。SOPHIA休止後は「MICHAEL」として音楽活動を続けている。俳優としても目覚ましく活動し、出演代表作には「人にやさしく」(CX)、「山田太郎ものがたり」(TBS)、舞台「リンダリンダ」「キサラギ」、Vシネマ「仮面ライダーエターナル」など。他アーティストへの楽曲提供やプロデュースワークも多く、ヴォーカリストというカテゴライズを超え、多彩な分野で活動するクリエイターアーティストである。